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●歴代審査員の紹介

2001年 第11回 瓦屋根設計コンクール

審査員講評



村尾 成文
むらお なりふみ
日本建築家協会
日本設計取締役副会長
  今回の募集は初めての試みとして住宅部門と一般建築部門に分けて行われた。応募作品は住宅部門が70作品、一般建築部門が66作品の合計136作品であった。一次審査、二次審査を経て、最終審査で16作品を受賞作品として選び出した。最終審査では伝統を継承した瓦屋根の素晴らしさだけでなく、金属とと瓦の混合方式など新しい瓦の使い方を追求したものや建築全体の質の評価も加えて総合評価を行なった。金賞の2作品はこうした観点から高い評価を得たものである。濱口邸は母屋と離れによる旧家を離れの立て替えと母屋の改修によって再生させたものである。離れの軽やかに浮かんだゆるやかな勾配の屋根を金属板でふいて、その継手の部分のみを特注の瓦で押さえるといった巧みな工夫がされている。MAYUMIYAの工房は造形作家のためのアトリエ併用住宅である。集成材方杖ラーメン構造による大屋根空間を創り出し、二度焼き還元方式による特注和形銀いぷし瓦でふいたものである。瓦以外にも柿渋ベンガラで塗り込まれた板壁や敷地の土をまぜたタタキ土間や土壁をはじめ建築全体が自然素材で構成されていて大変に魅力的である。
  銀賞のさぬきの家は、蔵や瓦屋根の多い周辺環境に違和感が生じないように土佐漆喰と色むらのある瓦でふいたもので、棟瓦は台風や地震に強いようにアルミ材を用いている。交通路の多い道路側の腰壁を杉板張りではなく、耐震性鋼板張りとしているのも興味深い発想である。銅賞の法隆寺大宝蔵院・百済観音堂は、施設の耐火性を確保しながら伝統様式を実現するという課題を解決したものである。高耐久性コンクリートの躯体に伝統的な木組みを取り付けているが、境内出土の瓦を復元利用した和らぎのある反りをもった屋根や水波とと蓮華をあしらった平厚瓦板敷きの前庭は見事である。特別賞の横浜市立金沢自然公園夏山口入口アートウォールは、動物園入口にあって動物達に親しむ楽しい時の始まりを期待させる作品である。粘土瓦の可能性を広げてみせてくれる秀作である。景観賞の沖縄平和祈念資料館は、悲惨な沖縄戦の記憶を風化させをいために設けられた「平和の礎」の隣りに建てられていて、その重をり合う沖縄特有の美しい赤瓦屋根は紺碧の海と共に風土の特色を表現している。


村松 映一
むらまつ えいいち
日本建築学会
竹中工務店常務
  濱口邸(双軸の舎)の設計者山本恭弘民は第10回の金賞受賞者である。連続の金賞受賞に敬意を表したい。店舗併用住宅母家の一部改築、離れの建て替えと渡り廊下を新設する旧家の再生である。離れ、渡り廊下、改築した母屋の平家部分はカラーステンレスと聖瓦:素丸の組み合わせと、軒桁のない浮遊感のある軒先のディテールが醸し出す軽快な表情をもつ瓦屋根を古瓦を再利用した2階建て入母屋造りの母屋に貫入させることにより、住まいに新たな生命を与えている。設計者の甍への飽くなき想いから生まれた作品である。MAYUMIYAの工房は造形作家のアトリエ兼生活の場である。集成材方杖と鉄筋によるハイブリッドな架構による柱のないフレキシブルで且つ自然素材で構成された空間が民家型建築の新たなあり方を提案している。特注銀いぷし瓦の大屋根と板壁の素材でおおらかな形態が東讃岐の風景に新鮮な香りをもたらしている。さぬきの家は土佐漆喰、耐候性、鋼板張りと切妻瓦屋根が醸し出すリズミカルな連なりが、随所にみられる洗練された巧みなディテールデザインと京都甍塾の卒業生による瓦葺きの職人芸によって熟成度の高い作品へと昇華されている。法隆寺大宝蔵院・百済観音堂は百済観音の安住の場である御堂を中心に正面に中門を構え、中庭をを囲んで東西に宝物収蔵庫を配置した伽藍が境内の諸堂・諸院の甍の連なりと調和した品格と風情のある斑鳩の美を醸し出している。横浜市立金沢自然公園夏山口入口アートウォールは象眼された手作りの粘土瓦がカラフルな色づかいと巧みな構図によって、自然公園への期待感を増幅する仕掛けとなっている。タイル等に代表される陶壁画への素材としての挑戦でもある。沖縄県平和祈念資料館は赤瓦屋根が象徴する失われた伝統的集落の風景に想いを馳せた作品である。佳作となった作品はいずれも瓦への想いがつくりだした優れた作品である。緩やかを弧を描く大屋根が7寸径紐丸瓦と棟飾りない棟瓦と軒先の大隅巴瓦によって稜線の美しい新鮮なフォルムをつくりだしている土と陶の工房美乃里は特に印象に残っている作品である。


三井所 清典
みいしょ きよのり
日本建築士会連合会
アルセッド建築研究所所長
  金賞(国土交通大臣賞)の濱口邸は「瓦」に対する「信頼と愛情」を施主、設計者及び施工者が共々抱き、それを美しく表現した傑作である。改築・再生された「母屋」の屋根には風雪を刻んだこれまでの瓦を愛しむように再利用し、それによって過去と現在そして未来へと記憶を継いでいる。「離れ」とそれを「母屋」と結ぷ平屋の屋根は、全く新しく開発された瓦棒葺きである。勾配は緩やかで、ほんのりとムクリがついている。瓦棒部には、小振りにデザインされた本瓦葺きの丸瓦のような瓦を用いている。谷部はフラットで瓦材ではないが山の丸瓦が並ぷ様は確かに落ちついた瓦屋根であり、スマートな感じも覚える。瓦の新しい用途の道を拓き、かつ美しい住宅に仕立て上げた作者の力量と情熱を高く評価したい。
  金賞(経済産業大臣賞)のMAYUMIYAの工房は、大屋根をもつ民家風の木造の工房で、特に桁のある平側からみる立面は大半が大きな屋根が占め、壁は深い庇の下で殆んど目立たない。日本の里山集落でよく見られる屋根が主導する風景を想い出す。作者はこの圧倒的を屋根面積を一面に同質同色の瓦で葺くことを避け、職人の技が活きる二度焼き還元方式による色ムラの瓦を積極的に採用し、自然な風合いの屋根を実現させている。
  銀賞のさぬきの家は瓦屋根と白壁をテーマに外観がまとめられた住宅で、屋根廻りの各部の納りにさまざまな工夫をし、表現と性能の確保に成功している。瓦による表現とそれに伴う周辺素材の組合せは、作者の経験の豊かさを示している。
  銅賞の法隆寺他佳作の殆んどの作品は、建築全体に端正な佇いを示しているがこれはやはり瓦を扱うことによって生じる日本的建築の特性と思われる。これとは違って沖縄県平和祈念資料館としまね海洋館の赤瓦は地域性の表現を強める点で瓦の力を引出したものである。
  今回異色な提案は横浜市立金沢自然公園夏山入口のアートウォールのカラフルな瓦で意欲的で興味深い提案である。
  全体として、建築家の皆様が瓦の扱いに次第に慣れてきているという印象が深かった。


向井 征二
むかい せいじ
日本建築士事務所協会連合会
向井征二建築事務所
  20世紀の多くの屋根材料が開発され、新しい工法と共に建築界に貢献してきました。21世紀を迎えて「省資源・省エネルギー・自然素材活用・リサイクル等」の環境共生が叫ばれる今日、21世紀最初の甍賞審査に期待をしながら参加させていただきました。
  前回に比べて応募作品が少な目でしたが、住宅部門では展示場に有るような住宅が少なくなって、こだわりを持った瓦屋根の良さが目立ちました。
  特に「金賞」の濱口邸は旧家の再生を主眼とし、立て替え部分は異質な瓦屋根にこだわりが見られ、旧家の葺き替え部分は古い瓦の再利用が資源の有効利用を表しております。これは建築主・設計者・施工者が3者一体となってこそ出来るすぼらしい作品でした。
  楊梅荘は、緑に囲まれた広い敷地と軒先の緩やかな曲線が美しく、自然との調和で新しい数寄屋造りが生み出されています。一般部門はどれも綺麗にまとまった作品が多く有りました。
  「銅賞」の法隆寺百済観音堂は飛鳥時代の再現ですが、1200年を耐えた伽藍の中で輝く新しい飛鳥瓦に期待感をもちました。また工夫を凝らした中庭の敷き瓦の表現は見事であります。
  八海山泉計画は、稜線に合わせた曲線屋根の本瓦葺きと直線屋観をS瓦葺きでまとめた設計者の意図を評価したい。
  サメをイメージしたしまね海洋舘アクアスは、「むくり屋根」の独特な瓦の光が一層建物を引き立てていると感じました。
  いずれにしても伝統ある瓦は、これからの課題”環境共生”には、欠かせない屋根葺き材であり、消音・断熱から考えても新建材に劣るところはない様に思います。日本の屋根に瓦が多く使われ、甍の波が蘇るのを願っております。


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