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甍賞
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●歴代審査員の紹介

2014年 第16回 瓦屋根設計コンクール・第3回 学生アイディアコンペティション

審査員講評



古谷 誠章
ふるや のぶあき
日本建築学会副会長
ナスカ一級建築士事務所代表
早稲田大学教授
  甍賞の審査は二度目となるが、今回は学生部門も加わって一段と活況を呈した。その学生部門では、 『瓦素材』を用いた新しい公共空間の課題に対し、バラエティに富んだ80点の応募があり、とても楽しませてもらった。 選考の結果、見事に金賞となったのは「日本風景となる造成地」で、普通ならせいぜい化粧コンクリート擁壁となってしまう 住宅地の擁壁に瓦素材を用いるアイディアで、これだけで風景を一変させる力がある。またその土地の瓦を使うことで、 それぞれに風土性が生まれるのも魅力だ。瓦製造の過程で出る規格外品の活用にも繋がる。 銀賞「命の帯瓦」は津波浸水域を可視化すると共に常時は住民の憩いの施設として、 また銅賞「繋ぐ道」は高速道路に対する提案で、いずれも都市的、土木的なスケールの構築物への提案に優れたものが多かった。 瓦の利用価値を格段に高めるものだ。
  作品例の部門では、一般部門26点、住宅部門18点の応募があり、金賞の「亀山市立関中学校」は公立中学での充実した瓦葺き校舎の実現に敬服した。 同じく金賞の「枇杷の家」の洗練された瓦屋根造形とともに、極めて完成度の高い作品である。 銀賞の「名古屋商科大学国際教育研究センター」は、伸びやかな瓦屋根の造形に、熱田神宮の「信長塀」のモチーフを対比させて美しい。 銅賞の「神戸女学院メアリー・アンナ・ホルブルック記念館」は多彩な釉薬瓦を丹念に施した力作である。 また江津市の「シビックセンターゾーン」は壮大な再開発計画地に、入念に瓦素材の活用を計画した大作で、景観賞を贈るに相応しいと考えた。


堀越 英嗣
ほりこし ひでつぐ
堀越英嗣ARCHITECT5代表
芝浦工業大学教授
  甍の持つ美しい日常の風景を描き出した小津安二郎監督の映画のシーンがそこで繰り広げられる普通の人々の生活とともに私の原風景として心に残っています。 頻繁に訪れる京都、奈良の甍の景観は日々の生活の中で失ってはならない大切な風景として心に刻んでいます。 審査にあたり、甍の持つ美しい風景を現代建築として継承する姿勢が今回の甍賞の応募作品から伝わってきました。 住宅部門金賞の「枇杷の家」は既存の建築や枇杷の木との調和を図る中から生まれた、自然で穏やかな仕事でありながらも、 平瓦と木造の軒裏を美しい納まりで構成することで次の世代への新しい継承を感じさせる大変優れた作品であると思います。 現在、学校建築というと計画的な部分の新しさが注目されている中で、一般部門の「亀山市立関中学校」は、甍という屋根の質感やスケール感がもたらす、 包み込むような優しさが伝わってくる中庭の雰囲気に感銘を受けました。 学生たちの日々の生活の中で心を育むような場所が甍という質によってもたらされており、金賞に相応しい作品と思います。 銀賞の「名古屋商科大学国際教育研究センター」は起りの大屋根と信長塀の立体的構成が美しい街並みを形作っていて、 本来日本の建築が周囲の庭や外構と共鳴して風景を作るということを思い出させてくれます。 スパニッシュ瓦の新旧の色彩を丁寧に追求した「神戸女学院」や、地域全体の景観が瓦で調和することを意識的に行った「シビックセンターゾーン」 の試みも現代における古くて新しい提案と思います。 学生部門の金賞受賞した「日本風景となる造成地」では現在の郊外の一般的風景となっている敷地造成の擁壁による重苦しい景観を、 垂直面の景観素材として瓦を造成の擁壁に適応させることで、美しい風景に一変させる大変優れた発想です。銀賞、銅賞を含めた他の案の多くが、 建築と土木との境界を超える提案となっており、「瓦という素材を通して考えることで分野を超える」可能性を、多くの設計者に感じて頂けることを期待しています。


村上 晶子
むらかみ あきこ
村上晶子アトリエ主宰
明星大学教授
  『瓦』は、土から生まれた素材として懐かしい皮膚感覚を持っています。一枚毎の魅力もさることながら、集まった『甍の波』の群造形は塊としても美しい風景を創ります。 そして『瓦』は自然との親和性と同時に、雨や光を受けて存在を示す強さも持ち合わせています。
  今回の学生部門のテーマでは、心を紡ぐ『瓦』のある風景の継承と題して新しい日本の原風景が提案されることを期待しました。 若い世代が『甍』という言葉に響いてくれて、思いがけない提案が多数出てきたことを嬉しく思います。 なかでも、心を紡ぎ未来に懸け橋を渡してくれる風景を創っていたのは、銀賞『命の帯瓦』の林拓真さんです。 魂の灯が過去から未来へと連綿とつながる心象風景が、海岸沿いの瓦屋根の帯に表象され、人々の心が行き交う温かさが感じられ感動しました。 また、今回驚いたことは、土木的構築物を瓦で覆うことで人間スケールへの親和性を持たせたものが多数提案されたことです。 銅賞『繋ぐ道』の吉田昂平さん・石塚迅さんの案は、高速道路という必要悪を逆手にとりつつ屋根の連なりの造形として自然に風景に馴染ませて創ろうとしていることに好感が持てました。 金賞の日野雄介さんの『日本風景となる造成地』も、瓦の小端積みの繊細さが新しい住宅地の風景を創る提案です。
  一般部門では、金賞今川忠男さん設計の『枇杷の家』が愁眉です。遠景ではいぶし平瓦による水平線の強調による爽快さがあり、 近景における自然素材との懐かしさと共に魅力を醸成しています。土着的で野暮ったくなりがちな素材を微塵も感じさせない清廉な表情を見せています。 このような作品ができることで、現代の建築へ瓦を使うことのイメージに新しい風が吹くことと思います。


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