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2005年 第13回 瓦屋根設計コンクール
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隈 研吾 くま けんご |
日本建築学会
隈研吾建築都市設計事務所
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甍の魅力とは寸法のリズムであると、私は常々考えていました。奇しくも金賞に選ばれたものは、住宅・一般の両部門とも、リズムのデザインにおいて秀でたものでした。上部にのる瓦の醸し出すリズムと、下部の木の格子のリズムとが、両部門ともうまい具合に響き合っています。瓦も木もともに粒子状の存在であり、国有の寸法を持っています。その寸法同士の調整は、今の時代の流行のデザインといってもいいでしょう。しかし、下手をすると職人芸的な退屈な繰り返しにみられる危険もあります。
そんな視点で眺めてみますと、銀賞のプレキャストコンクリートと瓦の組み合わせの新しさが目を引きました。プレキャストコンクリートという即物的、工業的なものと、瓦という伝統的なものとが溶け合いながら見事に響き合っています。平入り、妻入りという屋根の形状に関しての本質的考慮も興味深いものでした。このような新旧の出会いから、瓦の新しい可能性がひらかれる予感がします。
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岸 和郎 きし かずろう |
日本建築家協会
K.Associates
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瓦は日本の伝統的な建築材料です。私は京都をベースに仕事をしていますが、出張から新幹線で帰ってきた時、東山トンネルを抜けて眼の前に広がる京都の街並みを見ると、いつも「これで帰ってきたんだ」と安堵の気持ちになります。そんな気持ちにしてくれるのは京都の街並み、それと新幹線から俯瞰じた時にまず眼に飛び込んでくる瓦がつくりだす家並みのリズムに他なりません。
私自身は瓦屋根の建物を設計した経験はそれほどありませんが、瓦を屋根ではない建築部位、壁や床に積極的に使いたいと考えてきました。それは、瓦を屋根材料に限定して考えたくないとずっと思っていたからです。今回の審査では、第1部については瓦の新しい可能性を垣間見せてくれるような作品を、築2部では大規模な建築となりますから、むしろ屋根そのものの美しさを主題とした作品を選びたいと考え、選考したつもりです。
今、審査を終えて思うのは”瓦という素材の持つ可能性”、それがあらためて見えてきたような気がします。伝統的な使用だけではなく、新しい建築空間のきっかけを与えてくれる素材なのではないか、そんな風に感じます。
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渡部 和生 わたなべ かずお |
日本建築士会連合会
惟建築計画
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甍賞の審査をさせて頂くにあたって、まず私自身が瓦についての日頃の勉強不足もあり、審査当日、作品を通じて、また他の審査委員の言葉から多くのことを学んだ気がします。
応募作品は、住宅部門と一般建築部門に分けて審査をするルールで、私の興味は、瓦屋根と壁やその他の要素との「建築全体の完成度」や、「マテリアルとしての新鮮さ」、「構法としての提案性」、広義の景観形成や狭義の舗床材料や彫刻等の「ランドスケープの形成」など、4つの課題にありました。結果として屋根のみではなく、全体のデザインが相互によく練られた建築が高い評価を得たようです。伝統的な和瓦・洋瓦には更なる発展を望み、一方多様な現代建築の展開に慣じみやすい新しいテクスチャーや構法も期待しています。新しいマテリアルとしての瓦は、新しい構法の発展と連動していくかも知れません。そして、これからまた今までとは一味違う美しい甍が、街並みに映える日を見てみたい気がします。私にとって瓦は伝統と現代性の相克の中で、今後新たな展開を期待しているマテリアルのひとつです。
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小草 伸春 おぐさ のぶはる |
日本建築士事務所協会連合会
小草建築設計事務所
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私が住む島根県の日本海沿岸では、蒼い海と青い空に屋根の赤瓦が映える、のどかな風景が目に優しくしみます。また、京都の重厚に重なりあう黒瓦の甍の波の美しさは、凛とした精神性までも感じさせてくれます。瓦は街並みの美を構成する大きな要素であり、その土地の景観をつくりだす重要な素材です。瓦屋根の風景の穏やかさ、優しさ、静けさと瓦の持つ力強さが絡みあい、その土地の文化や伝統を私たちに語り伝えてくれます。
今回の受賞作品は、伝統にならった作品から現代的なデザインにほどよく調和した作品まで、それぞれに特徴をもった秀作でした。金賞の「総合福祉施設エーガイヤちくさ」は比較的大規模でありながら、福祉施設らしく静かに佇んでいる様子が伺えました。それは黒瓦の大きな起り屋根と自然石が埋め込まれた、基礎部分の絶妙なバランスやテクスチャーが黒瓦の屋根の穏やかさと優しさを際だたせているからでしょう。同じく金賞の「内海の家」は30坪と小規模な木造住宅ながらも、土間を囲むルーバー柱の垂直性とシンプルな黒瓦の切り妻屋根、コンクリート打ち放しの構成が軽快で力強く、瀬戸内の海に映えて存在感をアピールしています。他の受賞作品もそれぞれに瓦という素材の特性を生かしながら大胆に、また繊細に注意深くデザインされ、いずれも高く評価されました。今回の審査で、選に漏れた作品も含め意欲的な創意あふれる作品に触れて大いに刺激を受けました。
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芦原 太郎 あしはら たろう |
日本建築美術工芸協会
芦原建築設計研究所
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コンペの審査で瓦がのった建物ばかりを数多く見るのは、なにかとても新鮮な経験でした。最近の建築に瓦が使われる機会が少ないことがそう感じさせたのかもしれませんが、瓦の持つ落ち着いた風情の魅力を再認識することができました。この賞は、伝統的な街の景観や建築に不可欠であった瓦の今日のあり方を見出し、奨励していくことを目指しています。
審査は建築の評価ではなく、あくまで瓦を今日の街や建築の文脈にうまく位置づけて使っているものを評価したつもりです。受賞作品の中から、瓦が街の景観を守り育てていくことに貢献しているものや、建築の魅力をうまく引き出しているものを見出すことができたのは幸いでした。
近代化と、多様化が進んできた現代にあって、かつての帝冠様式のように安易に現代の建築にのせるのでは瓦の未来は開けません。瓦の可能性を引き出し、積極的に景観や建築を造り出す模索が始まっています。
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